「御頭の初キッスっていつですか?」

 

 

そんな言葉が茶をすする正守へと投げかけられる。先ほどまで、ざわついていた部屋は一気に水をうったようにシーンとしずまりかえり、皆興味津々といったように耳をそばだてた。

だが問われた本人は、皆の好奇心と期待する気持ちなど気づく事もなく「突然だな〜」と、どこか間延びした言葉をもらし笑ってみせるだけ。

 

今、夜行の男性陣がいるのは正守の実家だ。黒楼の戦いにそなえ墨村の家を間借していたのだ。

早めの夕食も終り夜中になるまではまだ時間がある。そんな一時の和んだ空気の中での出来事。

良守も当たり前のように正守の横で食後に出された茶をすすっていて、危うく熱い茶を吹きそうになったのは言うまでもない。自分以外の家族がこの場に居なくてよかったと内心ホッとする。居れば確実に慌てうろたえる父に茶を吹く祖父・興味心身な利守が居て大騒ぎになっていただろう。

良守も心内の焦りを隠しながら残りの茶を口に含むといまだ横で笑う正守が何と答えるのだろうかチラリと盗み見る。
そんな良守を、ふと見下ろしてきた正守の目と合ってしまう。
つい驚き焦っていると目を逸らすタイミングを逃がしてしまい見つめてしまう結果となった。

そんな良守に正守は

「何?お前も聞きたいの?」

何処かからかうような口調で聞いてくる。良守は慌ててプイッと顔を背けると「聞きたくねぇーよ」と声を荒げて言ってた。

本当に聞きたく無いのかと問われれば、凄く聞きたい気もする。だがその事を言えるほど良守は素直ではなかった。

顔をそらした良守の横で正守が小さく笑った。今更気の無いフリをしてもバレバレなのだろう。バツの悪さに居心地が悪い。

「そうだな・・ファーストキスは中学の時だったかな?」

正守はサラリと言ってのけるその答えに部屋中がざわめきだす。

「ええーマジですかぁぁー青春真っ盛りじゃないですかぁぁー!!」

そして目がねをかけた長髪の男が率先して「はいっ!」と挙手すれば、勝手にたちあがり更に質問してきた。

「では相手はどんな子だったのですか!?」

再び聞かれた質問に、皆の視線は再び正守へと集まる。その興味心身といった視線に苦笑しながらも正守は答えた。

「そうだな〜負けん気が強くて小さくて可愛い子だよ」

「え?それってやっぱり御頭の初恋で初キッスっていう事ですかね?」

今度は別の男が机の上に身を乗り出すようにして聞いてくる。

「ん?まぁーそうなるかな?」

とたん、ざわめきが起こり、皆思い思いに騒ぎはじめた。

「わぁー聞けて嬉しいけどなんかショックッ!!!」

「頭領の初恋かぁぁ〜甘いぃぃー!」

中には机に伏せて泣き出す者までもでてくるしまつ。

そんな様子を見て「酒でも飲んでる?」それは無いと分かっていても、その盛り上がり方に苦笑しながらそう聞かずにはいられなかった。






「もっと上手に恋しましょう」より

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